名人和牛とは
「名人和牛」は、産地にかかわらずエサと管理を統一して生産された同じ美味しさの和牛です。
美味しさの「名人」
みなさんが普段口にしている牛肉は、国産和牛、交雑種(F1)、乳用種(ホルスタイン)、輸入牛等、多種に分かれます。
その中でも黒毛和種(和牛)は美味しい牛肉になるために改良されてきた品種で、生産される肉は日本が誇る世界最高クラスの肉となります。
その黒毛和種(和牛)を、原料と栄養価にこだわった配合飼料「名人」、そして徹底した管理によって大切に肥育したのが「名人和牛」です。
「名人和牛」の特徴
一般的に、霜降り牛肉は脂がしつこいと言われます。
しかし、「名人」で育てた牛肉は、融点が低くあっさりとした脂質が特徴で、たくさん食べても飽きのこないさっぱりとした牛肉です。
その理由は、「日本人が食べて美味しいと言われているものを牛に与えれば、その牛は美味しい牛肉になる。」という考えに基づいて生産されているから。
「最も美味しい穀物を与え、長期間飼育し、霜降りになった牛肉こそが、最も美味しい牛肉となる。」
このような考え方から開発された配合飼料「名人」は、高品質の原料にこだわり、高価なビタミンCも添加した高級飼料。そのエサを食べて育つからこそ、「名人和牛」の美味しさは格別なのです。
配合飼料「名人」について
良い牛肉・美味しい牛肉を作るには、牛の持っている能力(血統)の選別が重要になるのですが、その牛の能力を発揮させるために特に重要となるのが、飼料、つまり牛のエサです。
そこで、茨城県畜連では、数々の試行錯誤を重ねながら、昭和60年に茨城県米平公共育成牧場において、雪印種苗株式会社と共同で究極のエサを開発しました。
それが肉牛肥育専用の高級飼料「名人」です。
「名人」は、牛に与える穀物の美味しさ・嗜好性・栄養バランス・原料コスト、そして安全性等、さまざまな点にこだわりぬき、次のような考えのもとで研究・開発しました。
- マニュアルに添って使用すれば、「名人技」と言われるような霜降り牛肉を作ることができることを目指して開発しました。
- 日本人が食する穀物由来の原料を中心に配合しています。
- 安全性を第一に考え、動物性飼料や成長ホルモン、抗菌性物質は一切使用していません。
- 美味しい牛肉を生産することに、最高の技術・ノウハウを投入しています。
配合飼料「名人」の原料
ふすま(小麦由来)
パンや菓子・うどん等の原料である小麦は、お米に次いで日本人になじみ深い穀物です。ふすまは、小麦粉を製造する際に分離される果皮・種皮等の部分です。
ホミニーフイード(食用トウモロコシ由来)
製菓・食品・ビール製造・植物油等に利用される、食用トウモロコシから産出された「ぬか」や「外皮」の部分です。
大麦
脂肪質を軟らかくし、風味を良くする効果があります。
トウモロコシ
飼料用トウモロコシは、栄養バランス・カロリーを確保するため、できるだけ少ない割合で利用しています。(加熱圧ペン加工)
大豆粕(大豆由来)
エサの材料の中で最も良質なタンパク質を豊富に含んでいます。
米ぬか
食用米から産出される「ぬか」を配合しています。
その他
ミネラル・ビタミン等無機質にもこだわっています。
ビタミンCを特別添加・ビタミンAやEも添加しています。
貝化石(ミネラル補給)を混合しています。(貝化石は、数百万年の歴史を持つ柔らかなカキ貝を中心に、魚貝類・海草・プランクトン等がそのまま海中土中に閉息・腐食しつつ化石になった優れた天然総合ミネラルです。これを高温で処理し、飼料に混合しています)
※動物性の原料は、一切使用していません
粗飼料のこだわり
牛は草食動物であり、穀物だけでは育ちません。「名人」を食べさせている茨城県畜連の直営牧場や多くの農家では、良質な稲ワラ以外に「BIO(バイオ)バガス」と呼ばれる粗飼料を給与しています。
BIOバガスとは、サトウキビを原料とし糖蜜を加えて発酵させた粗飼料です。甘い香りがして牛も大好きなだけでなく、バニリン(バニラエッセンスの素となる成分)が多く含まれているため、風味豊かな牛肉ができるのが特徴です。
バイパスビタミンCについて
ストレスの緩和や抗酸化作用、免疫力の向上や感染症の予防、そしてコラーゲンの生成などに効果があるとされる「ビタミンC」。肥育牛においても、霜降りの肉、つまり「サシ」の素となる細胞の増殖分化に促進的に働くことが注目され、畜産試験場でも脂肪交雑やきめ・しまり・脂肪の質にビタミンCが影響を及ぼすとの試験結果が報告されています。
そのため、配合飼料「名人」はビタミンCの添加にこだわり、バイパスビタミンCを取り入れています。バイパスビタミンCとは、ビタミンCがルーメン内で分解されないようバイパス処理をしたビタミンCのことで、これによりビタミンCを効果的に給与することができ、4等級および5等級の上物率増加につながります。
オレイン酸を多く含む、上質な脂肪
オリーブオイルに多く含まれ、悪玉(LDL)コレステロールを抑制する効果があることで知られる「オレイン酸」。実は、和牛肉にも多く含まれていることをご存知ですか?和牛肉100g中に含まれるオレイン酸は、約22~23g。これはオリーブオイル大さじ2杯分のオレイン酸に相当します。つまり、和牛は非常に効率的なオレイン酸摂取源と考えられます。
オレイン酸は、血管の健康を保ち、生活習慣病の予防や美容への効果も注目される成分ですが、牛肉の食味にも関りがあり、オレイン酸含量の高い牛肉はより風味が良く、脂の口どけも良くなります。
品質への取り組み
「名人」のユーザーに向けて、茨城県畜連が情報・技術の提供をおこなっています。単に飼料を販売するだけではなく、製造・販売元の雪印種苗(株)や多くの関係農協等と共に、茨城県畜連の職員が定期的に巡回し、最新の情報・技術を提供しています。
エサと管理を統一して生産された「名人和牛」の枝肉には、生産履歴(給与飼料・飼育者・個体識別番号等)の情報開示のため、全頭に「証明書(黒毛和牛枝肉証明書)」を発行しています。
また、各方面からの要望により、配合飼料「名人」を使用して肥育された牛肉に「名人」の刻印を付けて出荷することで、「名人=美味しさ」というイメージを定着させ、「名人」印の牛肉がより多くの消費者に届くよう取り組んでいます。
「美味しさ」の普及と拡大
これらの取り組みが実り、また、トレーサビリティ(生産・流通履歴を追跡できる仕組み)制度が義務づけられて生産履歴がわかるようになったことにより、配合飼料「名人」を食べて生産された牛肉の美味しさが、「名人」の名称と共に各地で高い評価を得るようになりました。
そして、本会3カ所の直営牧場(黒毛和牛約1,000頭を飼養)や「名人」を利用している指定肥育農家で飼育された牛を指定して利用する流通業者・スーパー等の小売り店・焼肉店・レストラン等が多くなり、新たにギフト商品にも掲示が開始され、「名人」を食べて育った肥育牛の需要が拡大しています。
それに伴い、配合飼料「名人」を使用する肥育農家も増加を続け、現在では関東を中心として、中国・四国・中部・東北、また北海道全域と使用地域が広がっています。
名人和牛の産地
- 茨城県(常陸牛)
- 北海道(みついし牛・とうや湖和牛等)
- 青森県
- 岩手県
- 宮城県
- 秋田県
- 山形県
- 福島県
- 栃木県
- 埼玉県
- 千葉県(かずさ和牛)
- 新潟県
- 長野県
- 静岡県
- 兵庫県
- 島根県(かつべ和牛)
- 岡山県
- 熊本県
- 大分県
- 宮崎県